小児科は生まれたばかりの赤ちゃんも診ています。
いわゆる「新生児」という分野です。
新生児でもっとも多くみられるのが「新生児黄疸」という病気です。
新生児黄疸の原因については、こちらの記事に書きましたので、併せてお読みください。
正常な範囲内の黄疸
赤ちゃんは生まれてすぐに、胎児赤血球というお腹の中専用の赤血球が分解されていきます。
この赤血球が壊れると、黄色いビリルビンという色素になります。
この色素は肝臓で代謝されて、便として出ていくのですが、赤ちゃんは肝臓の機能がまだ未熟で、体に黄色い色素が溜まってしまいます。
これが生理的黄疸です。
生まれて3日から5日くらいに出現する、普通の黄疸です。
日本人を含めたアジア人は、肝臓の力が弱く、ビリルビンが溜まりやすいと言われています。
ですので、日本人は生理的黄疸が強く出やすく、生まれて3日もすれば、みんな黄色くなっています。
しかし、このほとんどが正常範囲内の黄疸です。
危険な黄疸:ビリルビン脳症(核黄疸)
黄疸が軽微であれば、特に治療しなくて構いません。
ですが、あまりに強い黄疸になると、黄色い色素が脳に沈着し、発達が遅れる原因になってしまいます。
これをビリルビン脳症や核黄疸と言います。
ネルソン小児科によると、間接ビリルビンが20mg/dLを超えるとビリルビン脳症のリスクがあると書かれています。
間接ビリルビンが25~30mg/dLを超えると、30%がビリルビン脳症になるとされます。
黄疸の赤ちゃんにとって大切なことは、黄疸が強くなったときに、適切な治療をして、ビリルビン脳症を防ぐことです。
黄疸の治療
生まれてからの時間や、体重によって、治療が必要となる基準が異なります。
これは、生まれたばかりの赤ちゃんや、体重が小さい赤ちゃんのほうが脳脊髄関門という脳を守るバリアが弱いためです。
バリアが弱い子ほど、光線適応となる基準が厳しくなっています。
したがって、一概に「この数値だと光線療法」とは言えません。
ですが、イメージを持ってもらうために、一般的な目安も併せて書きます。
なお、ビリルビン脳症を起こすのは間接ビリルビンなのですが、より測定しやすい総ビリルビン(以下、TB)を基準としてよく使います。
また、遊離ビリルビンであるアンバウンドビリルビン(以下、UB)もよく用いられます。
光線療法
適応基準:生後72時間まではTB15、UB0.6が目安です。
生後72時間を超えるとTB18、UB0.6が目安です。
ただし、黄疸のリスクや週数や体重によって前後します。
ビリルビンは青色の光をよく吸収し、異性体に変化します。
この異性体は水溶性で、腎臓で排泄され、尿とともに出ていきます。
重症な黄疸では、光線療法とともにたっぷりと輸液します。
輸液すると、尿が増えて、ビリルビンの排泄が促されるためです。
光線療法は簡便で、副作用はないと言ってよいです。
青色の光ですが、紫外線は全く含まれず、日焼けもしません。
LEDライトであれば熱も出ず、やけどの心配もありません。
とても安全で、効果の高い治療法です。
交換輸血
適応基準:生後72時間まではTB20、UB1.0が目安です。
生後72時間を超えるとTB22、UB1.0が目安です。
生後96時間を超えるとTB25、UB1.0が目安です。
ただし、黄疸のリスクや週数や体重によって前後します。
血をそっくり入れ替えることで、ビリルビンを下げるという荒業です。
効果はてきめんですが、赤ちゃんにかかる負担も大きいです。
核黄疸のリスクが非常に高くなったときは、躊躇せずに実行します。
ガンマグロブリン注射
適応:ABO不適合またはRh不適合による溶血性の黄疸で、交換輸血の基準に差し迫っているとき、または交換輸血の準備をしているときの補助療法として使われます。
免疫を体に入れることで、体内の免疫系をかく乱し、免疫性溶血をストップさせることができます。
ABO不適合による溶血性黄疸は比較的多いので、なかなか重要です。
アルブミン注射
適応:UBが上昇している児に有効です。
ビリルビンの一部は、血液中でアルブミンと結合しています。
アルブミンと結合していれば、分子量が大きくなるので、脳脊髄関門でトラップされ、脳に行きにくいと考えられます。
アルブミンと結合していない遊離ビリルビンをアンバウンドビリルビン(UB)と言います。
UBが高いとき、体の中にアルブミンを入れると、UBと結合し、UBが減ります。
まとめ
ビリルビン脳症を防ぐために、ある基準以上の黄疸には治療が必要です。
- 光線療法
- 交換輸血
- ガンマグロブリン注射
- アルブミン注射
これらは組み合わせて治療されることもあります。
また、肝臓で代謝された直接ビリルビンは便として体から排出されますので、ミルクをしっかり飲ませて、しっかり便を出すことも治療になります。