子どものアレルギー性鼻炎。小児科専門医に必要な最低限の知識8点。

「鼻炎の薬も、もらえますか?」

「ああ、いいですよ」

アレロックを出して終了。
フォローはしない。

これが、一般的な小児科医のアレルギー性鼻炎診療なのではないでしょうか。

アレルギー性鼻炎に対する小児科の役割

私の外来は、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーと気管支喘息がかなり多いです。
この3つは、私の中で診断から治療までの流れが確立しているため、比較的スムーズに外来は進みます。
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーと気管支喘息の3つは、私の得意分野と言えそうです。

いっぽうで、小児のアレルギー疾患の中でも、私の苦手な分野があります。
それは、アレルギー性鼻炎です。

「アレルギー性鼻炎って花粉症のことでしょ?花粉症はおとなの病気なんだから、小児科医が診られなくていいじゃない」

確かにスギ花粉症のピークは40歳台です。
鼻アレルギー診療ガイドライン2013によると、40歳台の39.1%がスギ花粉症だそうです。
しかし、5~9歳の13.7%が、10歳台になると31.4%がスギ花粉によるアレルギー性鼻炎を患っています。

ダニなどによる通年性アレルギー性鼻炎においては。むしろ10歳台にピークがあり、その有病率は36.6%です。

アレルギー性鼻炎は決しておとなの病気ではありません。
むしろ、子どもに多い病気なんだという認識が必要です。

「でも、鼻鏡とか使ったことないし……鼻炎は耳鼻科の先生に任せましょうよ」

私も、アレルギー性鼻炎の診療の主役は耳鼻科の先生だと思います。
ですが、通年性アレルギー性鼻炎の子どもは、ダニによるアトピー型喘息や、アトピー性皮膚炎を合併していることもあり、耳鼻科にすべてお任せというわけにはいきません。

アレルギーはアトピー性皮膚炎から始まり、食物アレルギーや気管支喘息があとに続き、そして最後にアレルギー性鼻炎が登場します。
4つのアレルギー疾患が順々にやってくる様子はまるで行進しているように見えるため、「アレルギーマーチ」と呼びます。

アトピー性皮膚炎は皮膚科で、食物アレルギーや気管支喘息は小児科で、アレルギー性鼻炎は耳鼻科で、という方針は、専門的でよいのかもしれませんが、「ぜんぶ小児科で診ます」という方針も私はかっこいいと思います。

ぜんぶ小児科で診る意義については、以前書きました。

ぜんぶ小児科で診ます。

2017.01.08

子どもにおいての有病率の高さと、総合医としての小児科医の役割を2つを背景とし、小児科医はアレルギー性鼻炎についても知っておかなければなりません。

小児科専門医としてのアレルギー性鼻炎診療

小児科専門医が抑えておくべき最低限の知識は次の8点です。

  • アレルギー性鼻炎の診断には、アレルゲンを確定することが必須。
  • 子どもに多いのはダニによる「鼻閉型」。
  • 「口を開けて寝る」や「いびきをよくする」は鼻閉のサイン。
  • 「鼻閉型」によく効くのはオノンやキプレス、シングレアなどのLTRA。
  • LTRAはついでに喘息にも効く。
  • 「くしゃみ・鼻漏型」には第二世代抗ヒスタミン薬がよく効く。
  • 鼻噴霧用ステロイド薬は効果が強く、副作用も少ないので併用しやすい。
  • 自然寛解しにくく、根治させたいならアレルゲン免疫療法。

たった8点です。
この8点だけ押さえていれば、必然的にガイドラインに準じたアレルギー性鼻炎診療になっていると思います。

逆に、この8点をしっかり押さえていても、鼻炎の診療が上手く行かない時は、耳鼻科やアレルギー専門医に委ねてよいと思います。

この8点がどうして大事なのか、「疫学・症状・診断・治療」の視点で具体的に書きます。

アレルギー性鼻炎の疫学

アレルギー性鼻炎は1960年代後半から増加しています。

戦後、北海道と沖縄を除いた地域ではスギの植林が広く行われ、スギ花粉の量が増えた影響が大きいとされています。

また、西洋式の建築様式は機密性が高く、ダニの増加を助長させているという意見もあります。

アレルギーの原因となる「アレルゲン」の増加が、アレルギー性鼻炎の増加につながっていると考えられます。

鼻アレルギー診療ガイドラインによると、5~9歳の13.7%が、10歳台になると31.4%がスギ花粉によるアレルギー性鼻炎を患っています。
日本医科大学の大久保公裕先生の全国調査では、3~5歳の4.5%、6~9歳の10.5%、10~12歳の12.1%、13~15歳の15.1%がスギ花粉症だそうです。

2つのデータには若干の乖離がありますが、年を重ねるごとにアレルギー性鼻炎の有病率は増していくという点は同じで、5歳以上の子どもの10-15%くらいがアレルギー性鼻炎だと認識すればよさそうです。

ダニなどによる通年性アレルギー性鼻炎においては。むしろ10歳台にピークがあり、その有病率は36.6%です。

おとなを含めた全人口でみると、アレルギー性鼻炎の原因はスギが最多ですが、15歳以下の子どもだけで考えれば、ダニがもっとも多い原因と考えてよいでしょう。

花粉症は女性のほうが多いですが、子どもはダニアレルギーがメインであるため、子どものアレルギー性鼻炎は男の子の方が多いです。

アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎の3主徴(もっとも典型的な症状)は、くしゃみ・鼻漏・鼻閉です。
鼻漏というのは、鼻水が下に流れ出てきてしまうことです。
鼻閉というのは、鼻詰まりのことです。

5歳の子どもが「僕は鼻閉です」という言うことは絶対にないでしょう。
「口を開けて寝る」とか、「いびきをよくする」とか、そういう症状は鼻閉と考えるべきです。

同様に、「鼻をよくすすっている」は鼻漏ですし、「鼻をいじったりこすったりしている」はくしゃみと考えることができます。

くしゃみと鼻漏は関係しあっていますので、この2つが多い場合は「くしゃみ・鼻漏型」といいます。
いっぽうで、鼻閉のほうが目立つ場合は「鼻閉型」といいます。

鼻アレルギー診療ガイドラインによると、子どものアレルギー性鼻炎は「鼻閉型」が多いです。

アレルギー性鼻炎の診断

アレルギー総合ガイドライン2013によると、アレルギー性鼻炎の診断は、①プリックテストまたは特異的IgE抗体検査、②鼻誘発試験、③鼻汁好酸球検査の3つのうち2つ以上が陽性であれば確定診断できます。

アレルギー性鼻炎の診断には、アレルゲンの確定が必須です。

「5月か6月頃に花粉症になるので、たぶんイネ科の何かなんだと思います」ではアレルギー性鼻炎の診断はつきません。
必ずアレルゲンをつきとめましょう。

調べるべき抗原はとりあえず「スギ」と「ダニ」だけで十分ですが、どうせ特異的IgE抗体を調べるなら、樹木系のヒノキ・ハンノキ、イネ科のカモガヤ・オオアワガエリ・ハルガヤ、キク科のブタクサ・ヨモギも調べてもいいでしょう。

花粉症ナビの花粉カレンダーが参考になります。
問診から季節性を疑う場合は、カレンダーであたりをつけることができます。

鼻誘発テストは、小児科医で行うことはまずできません。

鼻汁好酸球は、スギ花粉が飛んでいない時にはスギ花粉症の鼻水には好酸球がいないことが多く、診断するのは難しいです。
しかし、子どもに多いダニアレルギーであれば、一年中検査できますので、子どものアレルギー性鼻炎には、鼻汁好酸球検査は有用と言えるでしょう。

したがって、多くの小児科医はアレルギー性鼻炎を疑ったら、血液検査と鼻汁好酸球検査をします。

なお、鼻汁好酸球検査をしなくても診断は可能です。
なぜなら同ガイドラインによると、プリックテストまたは特異的IgE抗体検査が中等度以上陽性で、典型的な鼻の痒み・くしゃみ・鼻漏・鼻閉がある場合も、アレルギー性鼻炎としてよいです。
ただし、中等度陽性の定義が不明なので、診断があいまいになってしまいます。

なお、特異的IgEが陰性の場合は、好酸球増多性鼻炎や血管運動性鼻炎を念頭におきつつ、他の抗原検索を行います。

アレルギー性鼻炎の治療

鼻アレルギー診療ガイドラインによると、通年性アレルギーと花粉症とで治療法が少し変わります。
また「くしゃみ・鼻漏型」か「鼻閉型」かでも治療が変わります。
さらに、重症度でも治療が変わります。

正直なところ、かなり難しいです。
したがって、できるだけシンプルなるように解釈してみました。

  • 「くしゃみ・鼻漏型」には第2世代抗ヒスタミン薬(ザイザルやジルテック、アレグラ、クラリチン、アレロックなど。アレジオンは喘息への安全性が確立していないので注意)。
  • 「鼻閉型」にはLTRA(オノンやキプレス、シングレア)。
  • 抗ヒスタミン薬とLTRAは併用してもいい。
  • 必要に応じて鼻噴霧用ステロイドを追加。

これで、ガイドラインを大きく外すことはありません。

インタールやリザベン、アレギサール、ペミラストンなどのケミカルメディエーター遊離抑制薬は「鼻閉型」への有効性が言われていますが、「くしゃみ・鼻漏型」への有効性が乏しく、ガイドラインでも軽症例を中心として適応があります。
アレルギー性鼻炎を専門としていない小児科医には使いにくいでしょう。

抗PGD2・TXA2薬(バイナス)は小児適応がありません。

Th2サイトカイン阻害薬(アイピーディ)は、私は気管支喘息のコントロール薬として一時積極的に使ったことがありましたが、効いているのか効いていないのかよく分からない印象でした。
アレルギー性鼻炎においてもメインとはならない治療です。

LTRAは鼻閉に特に有効で、さらに喘息合併例には喘息にも有効であることが知られています。
小児の典型的なアレルギー性鼻炎は、鼻閉型でかつ喘息を合併していますので、オノンやキプレス、シングレアなどのLTRAを選択するのはとても理にかなっているといえるでしょう。

アレルゲン免疫療法

アトピー性皮膚炎や喘息は10~12歳で自然に治ることがありますが、アレルギー性鼻炎は自然に治ることはほとんどありません。
特に、スギ花粉症は治りにくいようです。

では、アレルギー性鼻炎にかかった子どもは、一生この病気と付き合っていかないといけない運命なのでしょうか。

この運命を変えるかもしれないと期待されている治療があります。
それが、アレルゲン免疫療法です。

アレルゲン免疫療法については、こちらの記事に熱く書きました。

減感作療法がアレルギー性鼻炎の運命を変える!根治につながる治療薬。

2017.03.02

まとめ

小児科専門医に必要な最低限の知識を8つ書きました。

小さい子どもの採血するのは、小児科医の得意分野です。
子どもの鼻閉に気づいたら、特異的IgE抗体を調べて、アレルゲンを特定するだけでも十分に小児科医の役割を全うできているでしょう。
実際の治療は、耳鼻科にお願いするのもよいと思います。

鼻炎の子どもの80%以上が日常生活の質を損なっていると報告されています。
小児科医がアレルギー性鼻炎の知識に疎いがために、子どもの苦しみに気づいてあげられないということがあってはいけません。