感染症法と学校保健安全法。感染予防に関する概要と分類とその違い。

感染症法。

学校保健安全法。

どちらも感染症に対する規則です。
この2つの違いを意識したことがありますか?

恥ずかしながら、私はこの2つの違いについて、あまり意識せずに今まで診療してきました。

しかし小児科では、インフルエンザや百日咳、おたふくかぜ、水疱瘡、アデノウイルス感染症、溶連菌感染症、RSウイルス肺炎、りんご病、手足口病、ヘルパンギーナ、ロタウイルス腸炎、ノロウイルス腸炎、カンピロバクター腸炎、マイコプラズマ肺炎など、多種多様の感染症に遭遇します。

小児科外来とは、感染症外来みたいなものです。
ですから、小児科医は感染症に対する規則もある程度知っておかなければなりません。

今回は、感染症法と学校保健安全法について書きます。

感染症法の分類

感染症法は、正確には「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」といいます。

感染症法とは「こういう感染症は危険だから、見つけたら保健所に届け出てね!」という規則です。

届け出をすることで、感染症の発生や流行を探知することができ、まん延を防ぐための対策や、医療従事者・国民への情報提供に役立てられます。

感染症のうつりやすさと重症さを考慮して、感染症を危険性が高い順に1類から5類に分類しています。

感染症法は「類」という単位です。
たとえば、1類感染症はエボラ出血熱やペスト、ラッサ熱など、かかるときわめて危ない感染症です。
2類感染症は結核、ジフテリア、鳥インフルエンザなど、1類には劣るもののやはり危ない感染症です。
3類感染症はコレラ、細菌性赤痢、O-157などの腸管出血性大腸菌など、胃腸炎症状を起こし、感染力が強いため注意が必要な感染症です。
4類感染症はニュースにもなったジカウイルスや、A型肝炎、E型肝炎、日本脳炎など、あまりなじみのない感染症が44種類も含まれます。

1類から4類までは、診断したら保健所に届け出なければなりません。
それが感染症法の規則です。

5類感染症は普段からよく見る感染症です。
5類感染症は、必ず保健所に届け出なければならない感染症と、指定された病院以外は届け出る必要がない感染症に分けられます。

必ず届け出ないといけない感染症は、麻疹、風疹、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌による髄膜炎や敗血症、急性脳炎などです。
意外なところでは、入院を要する水痘も保健所に届け出なければいけません。

いっぽうで、指定された病院でなければ届け出なくてもいい5類感染症は、RSウイルスや感染性胃腸炎、溶連菌、百日咳、突発性発疹などとてもたくさんの種類があります。

詳しくは、厚生労働省のサイトをご覧ください。
感染症の発生状況を探知し、注意喚起するための規則が感染症法です。
内科・小児科にとって、感染症法は大切な規則です。

学校保健安全法の分類

感染症法は、内科・小児科にとって大切だと書きました。
いっぽうで、学校保健安全法は特に小児科医にとって大事な規則です。

学校保健安全法は、学校への出席停止や登校の目安などを定めた規則です。
学校で集団生活するうえで注意が必要な順に1種、2種、3種、その他の感染症の4つに分類されています。
感染症法は厚生労働省が管轄する規則ですが、学校保健安全法は文部科学省の管轄です。

感染症法は「類」という単位を使いましたが、学校保健安全法は「種」という単位です。

1種の感染症

感染症法の1類・2類に含まれる感染症が、学校保健安全法では1種の感染症となります。
すなわち、エボラ出血熱やペスト、ラッサ熱などです。
かかると本当に危険な病気ですが、日本で普通に生活していて1種の感染症にかかるなんていうことはまず想定できません。

ほとんどの人にとって無縁な感染症が1種の感染症です。
ほとんど無縁ですので、知っておくべきことはありません。

2種の感染症

2種の感染症は、学校で非常に流行しやすい感染症です。
感染症法では1類から4類まではほとんど見たことがないような感染症でしたが、学校保健安全法における2種の感染症は、非常にポピュラーなものが多いです。

たとえば、インフルエンザ、百日咳、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水疱瘡、アデノウイルス感染、結核、髄膜炎菌性髄膜炎です。

これらは出席停止期間の基準があるので、参考にします。

3種の感染症

感染症法の3類感染症と、学校保健安全法3種の感染症は似通っているため、非常に紛らわしいです。
3種の感染症は、コレラ、細菌性赤痢、O-157などの腸管出血性大腸菌など3類感染症に加え、アデノウイルスやエンテロウイルスによる結膜炎も含まれます。

場合によっては3種の感染症に含まれる、その他の感染症

これですよ、これ。
極めて面倒な分類です。

「場合によっては3種の感染症に含まれる、その他の感染症」という扱いは、とても中途半端なんですよね。
場合によっては、というのはその時の流行状況で、校長が「これはやばいな」と思ったら3種の感染症に含めていいということです。

ノロウイルス・ロタウイルス・カンピロバクター・サルモネラなどによる胃腸炎、マイコプラズマ感染症、インフルエンザ桿菌感染、肺炎球菌感染、溶連菌感染、りんご病(伝染性紅斑)、RSウイルスによる急性細気管支炎、EBウイルス、単純ヘルペスなどなど、あらゆる感染症がこの「場合によっては3種の感染症に含まれる、その他の感染症」に含まれます。

登校の目安についても、文部科学省が指針を出しています。
小児科医は必ずこれを遵守しなければならないわけではありませんが、読んでみるとなかなか勉強になりますので、次の記事で紹介しようと思います。

まとめ

感染症法と学校保健安全法の特徴を書きました。

感染症法 学校保健安全法
管轄 厚生労働省 文部科学省
目的 流行状況の調査 登校・登園の目安
分類 1類から5類 1種から3種とその他の感染症
視点 マクロ ミクロ

感染症法は診断したときに保健所に届け出るものです。
学校保健安全法は病気が治ってきたときに、いつから学校に行っていいかを定めたものです。

感染症法は感染状況を把握し、注意喚起することで感染拡大の予防を目指しています。
学校保健安全法は実際の感染患者がいつから学校に復帰できるかを考え、感染拡大の予防を目指しています。

どちらも目指しているところは同じです。
ですが、感染症法はマクロな視点で、学校保健安全法はミクロな視点で、感染症に向き合っているように思います。