アレルギー専門医試験を振り返る:①アトピー性皮膚炎。

2020年のアレルギー性専門医試験を受けてきました。
どんなテストなのか気になる人もいるでしょう。
私も復習をしたかったので、まとめておこうと思います。

実際のテストでは、膠原病や自己炎症疾患、免疫不全症候群など幅広い分野で出題されます。
ですが、
普段のアレルギー外来で私が必要とするのは、「①アトピー性皮膚炎」「②食物アレルギー」「③気管支喘息」「④アレルギー性鼻炎」の4つです。
あと、ワクチンやステロイドなど「⑤免疫に関連する知識」も必要とします。

というわけで、アレルギー専門医試験で出題された内容を、上記の5つに分けます。

まずは第1回目
「アトピー性皮膚炎」を代表とする皮膚疾患に関する問題を振り返ります。

アトピー性皮膚炎の疫学

  • アトピー性皮膚炎の経過に、特定の傾向はない。
  • 小児アトピーの約50%が鼻炎や喘息を合併する。
  • 小児喘息の50%がアトピー性皮膚炎を合併する。
  • アトピー性皮膚炎は秋冬生まれの子どもに多い。
  • 0歳児の初診時期は冬が多い。
  • 二重抗原暴露仮説とは、経皮暴露による感作と、経腸暴露による寛容を指す。

アトピー性皮膚炎の診断

  • アトピーの診断:①掻痒、②特徴的皮疹と分布、③慢性、の3つを満たせば診断できる。(もちろん鑑別疾患はあるが)
  • 乳児では、湿疹が2か月続けば慢性といえる。1歳以降は6か月の経過で慢性である。
  • 急性病変:紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮。
  • 慢性病変:浸潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮。
  • 乳児期:頭、顔にはじまり、しばしば体幹、四肢に下降。
  • 幼小児期:頸部、四肢関節部の病変。
  • IgE上昇は参考項目ではあるが、診断必須項目ではない。
  • dennie-morgan:下眼瞼皺壁は思春期以降のアトピーでみられるが、診断項目でも参考項目でもない。
  • 乳児のアトピー性皮膚炎の特徴:成人よりTARC高め、成人より経皮水分蒸散量が多い、成人よりIgE低い、黄色ブドウ球菌が検出されやすい。
  • アトピー性皮膚炎の合併症として白内障、伝染性膿痂疹、カポジ水痘様発疹症など。
  • 緑内障はアトピー性皮膚炎の合併症というより、ステロイド外用の副作用の一つである。
  • 単純性顔面粃糠疹(ひこうしん)は小児アトピー性皮膚炎でよく見られる。白くて、少しざらざらする。
  • アトピー性皮膚炎による皮膚の菲薄化は可逆性。
  • 皮膚線状は不可逆。さざなみ状色素沈着も不可逆である。
  • 白色皮膚描記症は、掻いた場所の血管が収縮して白くなる。蕁麻疹とは真逆。

アトピー性皮膚炎の治療

  • アトピー性皮膚炎は乾燥を伴うので、用いるステロイドは軟膏が基本である。夏場で状態がまずまずならクリームもいい。頭皮はローションが基本。苔癬や痒疹にはテープがいい。
  • ステロイド吸収率は頬13倍、陰嚢42倍。
  • クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート)はI群。
  • ジフルプレドナート(マイザー)はII群。
  • プロトピックは2歳-5歳は1回1gまで、6-12歳は1回2-4gまで、13歳以上は1回5gまで塗れる。
  • 尿素クリーム:しみるので、びらんや潰瘍に塗ってはいけない。
  • 皮膚症状が安定していれば、卵の開始は生後6カ月が推奨されている。

接触皮膚炎

  • 外用剤が主な原因。化粧品が原因になりやすい。
  • ステロイド外用が第一選択。(内服ではない)
  • 光接触皮膚炎は光毒性と光アレルギー性(感作が必要)とがある。診断には作用波長UVAを用いる。
  • パッチテストは48時間貼って、剥がしたあとと、その翌日にチェックする。

蕁麻疹

  • 慢性蕁麻疹は6週以上続くもの。
  • 色素性蕁麻疹はdarier徴候あり。
  • 血管性浮腫は顔や唇、眼瞼、のどに好発する。
  • 機械性蕁麻疹、遅延性圧蕁麻疹は小児では稀である。

遺伝性血管浮腫

  • 常染色体優性遺伝。
  • 補体のC1を阻害するC1 inhibitorの欠損が原因。
  • 皮膚、腸管浮腫による腹痛、喉頭気道の浮腫による呼吸困難などが起こる(補体抑制成分の異常である)。
  • C4が低下する。
  • 10-20歳代の発症が多い。
  • 発作時にはC1 inhibitorの補充療法を行う(保険適応)。

高IgE症候群

  • STAT3の変異による。
  • 繰り返す皮膚膿瘍や肺炎などの細菌感染、新生児期からのアトピー性皮膚炎、高IgE血症が3徴。
  • 特有の顔貌、脊椎の側弯、病的骨折、骨粗鬆症、関節の過伸展、乳歯の脱落遅延などの骨・軟部組織・歯牙の異常、骨折の治癒遷延を合併する。
  • 免疫グロブリン補充療法は意味がない。生ワクチンは禁忌。
  • T細胞、B細胞は正常。

Wiskott-Aldrich症候群

  • 伴性劣性遺伝で男児のみ発症。X染色体のWASPが原因遺伝子。
  • 血小板の縮小と減少、湿疹、易感染性が3徴。
  • 巨大血小板にはならない。
  • T細胞、B細胞、NK細胞の機能低下があり、胎盤から移行したIgGが無くなる生後6ヶ月~2年程度で反復する感染を繰り返す。
  • IgGは正常~低下、IgMの低下、IgEの上昇が重要。
  • 免疫グロブリン補充療法は有効。造血幹細胞移植の対象。生ワクチン禁忌。

アレルギー専門医試験を振り返るシリーズ一覧

アレルギー専門医試験を振り返る:①アトピー性皮膚炎。

2020年2月4日

アレルギー専門医試験を振り返る:②食物アレルギー。

2020年2月5日

アレルギー専門医試験を振り返る:③気管支喘息。

2020年2月6日

アレルギー専門医試験を振り返る:④アレルギー性鼻炎。

2020年2月7日

アレルギー専門医試験を振り返る:⑤免疫に関する知識。

2020年2月10日

ABOUTこの記事をかいた人

小児科専門医、臨床研修指導医、日本周産期新生児医学会新生児蘇生法インストラクター、アメリカ心臓協会小児二次救命法インストラクター、神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野に入局。現在、おかもと小児科・アレルギー科院長。専門はアレルギー疾患だが、新生児から思春期の心まで幅広く診療している。