小児肥満症診療ガイドライン2017。介入のタイミングと診断基準。

体型は、とてもデリケートな問題です。
特に思春期の子どもにとっては、あまり触れられたくないでしょう。

それでも、高度の肥満は将来の心血管病や2型糖尿病に関連し、健康を脅かします。
小児科医が子どもの健康を願うのであれば、子どもの肥満症にも注意を払わなければなりません。

今回は、小児肥満症診療ガイドライン2017をもとに、肥満の子どもにどう介入するかを考えます。

肥満に介入するタイミング

小児科医が子どもの肥満に介入するタイミングは様々です。

自治体によっては、子どもの肥満に強く関心をもって、中等度肥満(肥満度30%)で精査を促しているところもあるでしょう。
そういう地域では、健康診断の結果、肥満度が30%を超えたら医療機関に紹介されます。
そして、小児科医はその子どもに介入を開始します。

いっぽうで、肥満に対して特段に意識を払っていない自治体では、多くの肥満症は健康診断で見過ごされるかもしれません。
こういう自治体では、肥満と関連して以下の症状が出てきて、ようやく小児科医はその子どもに介入することになるでしょう。

  • 体のだるさ。
  • 睡眠時のいびき。
  • 起立性調節障害に似た症状。(立ちくらみや頭痛、腹痛など)
  • 不登校。

小児肥満症診療ガイドライン2017にもありますが、肥満度が低いほど改善は容易ですから、できるだけ早期に介入を開始したいものです。
肥満にともなって様々な症状が出てきてからよりも、健康診断で早期に肥満の子どもを見つけだし、早期に医療機関を受診するように勧めるのが適切でしょう。

学校の健康診断の事後措置として、以下の指示が提案されています。
(小児肥満症診療ガイドライン2017ではエビデンスが不十分な事項もあり、「推奨」という概念を伴わないことが多いです)

① 軽度肥満(肥満度20-30%):本人と保護者へ肥満の健康障害について注意喚起し、生活指導を行う。

② 中等度肥満(肥満度30-50%):小児肥満症のリスクを検査するため医療機関への受診を勧める。医療機関でのチェック項目として、血圧、血清脂質(TC、LDL-C、HDL-C、non HDL-C、TGなど)、血糖、インスリン、ALT、AST、尿酸を含めるよう依頼する。

③ 高度肥満(肥満度≧50%):小児肥満症が強く疑われるため小児肥満専門医療機関の受診を勧める。また留意事項として、ウエスト周囲長の測定で、小学生≧75cm、中学生≧80cmの場合、小中学生ともウエスト身長比≧0.5の場合、黒色表皮種がみられる場合、その他、肥満症が強く疑われる症状がある場合は肥満度が軽度、中等度でも高度と同様に考える。

小児肥満症診療ガイドライン2017 p74
学校での予防対策

肥満度の計算

学校健診で肥満度を求め、30%を超えたら小児科医が介入するようになります。

では、肥満度とはどうやって計算するのでしょうか。

私は、日本小児内分泌学会の日本人小児の体格の評価というサイトをよく使っています。
このサイトの体格指数計算ソフトはとても便利です。

肥満度の計算は「性別・年齢別・身長別標準体重」で私は評価しています。

肥満と肥満症の定義

小児肥満症診療ガイドライン2017では、肥満の定義と、肥満症の定義が明確にされています。

中等度肥満(肥満度30%)以上の子どもに対して、小児科医がもっとも最初に行うアプローチは、「その子どもが肥満なのか、肥満症なのかを区別すること」でしょう。

肥満の定義:肥満度が+20%以上、かつ体脂肪率が有意に増加した状態(有意な体脂肪率増加とは、男児:年齢を問わず25%以上、女児:11歳未満は30%以上、11歳以上は35%以上)

小児肥満症診療ガイドライン2017 巻頭図表 表B

中等度肥満で紹介されたケースを想定すれば、肥満度は30%以上でしょうから、次にすることは「体脂肪率を測ること」になります。

体脂肪率の測定方法は、小児肥満症診療ガイドライン2017のp4に書かれています。
もっとも簡単なのは生体インピーダンス法でしょう。
すなわち、体脂肪も測れる体重計です。
普通の市販品であれば安く購入できますから、病院に買ってもらいましょう。
当院であれば産婦人科が持っているので、それを貸してもらっています。

肥満度が20%以上であっても、体脂肪率が低いのであれば、ただがっしりしているだけの子どもです。
肥満の定義には当てはまりません。

いっぽうで、体脂肪率も高いようであれば、肥満の定義を満たします。
次に考えることは、肥満症かどうかです。

肥満症:肥満に起因ないし関連する健康障害(医学的異常)を合併するか、その合併が予測される場合で、医学的に肥満を軽減する必要がある状態をいい、疾患単位として扱う。

小児肥満症診療ガイドライン2017 巻頭図表 表B

つまり、肥満症というのは、「病的な肥満」といえるでしょう。
小児科医は肥満の中から肥満症を見つけだし、適切な治療をすることが求められます。

肥満症の診断は少し複雑です。
次のうち、A項目を1つ満たすか、肥満度50%以上でB項目を1つ満たすか、B項目を2つ満たすかすれば、肥満症と診断されます。(なお参考項目は2つでB項目1つと同等とします)

A項目

  1. 高血圧
  2. 睡眠時無呼吸症候群などの換気障害
  3. 2型糖尿病・耐糖能障害
  4. 内臓脂肪型肥満
  5. 早期動脈硬化症

B項目

  1. 非アルコール性脂肪性肝疾患
  2. 高インスリン血症かつ/または黒色表皮種
  3. 高TC血症かつ/または高non HDL-C血症
  4. 高TG血症かつ/または低HDL-C血症
  5. 高尿酸血症

参考項目

  1. 皮膚線条などの皮膚所見
  2. 肥満に起因する運動器機能障害
  3. 月経異常
  4. 肥満に起因する不登校・いじめ
  5. 低出生体重児または高出生体重児

A項目2には睡眠ポリグラフ検査が必要となりますが、なかなか子どもにはできない場合もあるでしょう。
睡眠時無呼吸の診断は幼少児には難しく、診断は保留されることもあるでしょう。

A項目4の内臓脂肪は腹部CTがもっとも診断には適しますが、強い放射線被ばくを伴います。
ウエスト周囲長の測定で、小学生≧75cm、中学生≧80cm、小中学生ともウエスト身長比≧0.5のいずれかをもって内臓脂肪型肥満ありと評価して良いでしょう。

それ以外の項目は血液検査かエコー、問診で評価できます。
異常値についてはガイドラインを参照ください。
(簡潔な基準値は巻頭図表 表Cに、その根拠は第4章p23-45に書いてあります)

メタボリックシンドローム

肥満症とは別に、メタボリックシンドロームという概念があります。
メタボリックシンドロームの診断基準は以下です。

  1. ウエスト周囲長の測定で、小学生≧75cm、中学生≧80cm、小中学生ともウエスト身長比≧0.5のいずれか。
  2. 血清脂質:TG≧120かつ/またはHDL-C<40。
  3. 収縮期血圧≧125かつ/または拡張期血圧≧70
  4. 空腹時血糖≧100

1があり、2-4のうち2つあればメタボリックシンドロームと診断します。

1は肥満症のA項目4と同じです。
2も肥満症のB項目4と同じです。

3と4はそれぞれ肥満症の項目より厳しくなっています。

ともあれ、1が必須であり、それは肥満症のA項目であるため、肥満度が20%以上であればメタボリックシンドロームは必ず肥満症の定義に当てはまります。

肥満症とメタボリックシンドロームでは治療に差がありませんから、メタボリックシンドロームの診断意義は肥満度は低い(20%未満である)が、内臓脂肪の多い子どもを見つけるためにあると言えるでしょう。

肥満症とメタボリックシンドロームの治療

肥満症とメタボリックシンドロームは小児科医が治療をしなければなりません。

根気強く体重曲線を書きつつ、栄養指導を行い、上手くできれば褒めて、上手く行かない時は原因を一緒に考えて、支えていきます。

子どもは比較的運動をするものですから、大事なのは食べ過ぎを防ぐことでしょう。

とにかく根気強く。
私は年に3-4回採血をするようにしています。
その結果も、治療の強い動機付けになるでしょう。

まとめ

肥満症の症状が顕在化するのは、通常おとなになってからです。
今すぐに糖尿病や心筋梗塞になることはまずありません。
そのため、肥満に対してあまり問題意識を持っていない小児科医も少なからずいると思います。

ですが、子どものうちにしっかり介入しておかなければ、おとなになってから困ることになります。

小児科医は強い目的意識をもって、肥満治療にあたらなければなりません。

最後に、今回の小児肥満症診療ガイドライン2017を紹介します。